電動バイクの普及とチェーン需要の行方|駆動方式の変化が業界にもたらす衝撃
ベトナムで急速に普及が進む電動バイク。その裏で、チェーン駆動からベルト・モーター直結へと変化する駆動方式により、チェーンメーカーの需要はどう変わるのかを分析します。
■ バイク王国ベトナムとチェーンの密接な関係
長年、ベトナム市場はローラーチェーンの「成長エンジン」でした。日本製の420チェーンを中心に、耐久性・価格・修理性が評価され、ガソリンバイクの多くがチェーン駆動を採用。チェーンメーカーにとって、ベトナムは「数を稼げる市場」として存在感が大きい国です。
しかし、ここ数年でその前提が崩れつつあります。
■ 電動バイクの台頭と、見過ごせない“構造の変化”
電動バイクの普及は、単に「燃料が変わる」だけの話ではありません。駆動方式自体が変わるという、部品メーカーにとっては極めて重要な構造変化が起きています。
車種 | 駆動方式 | チェーン使用有無 |
---|---|---|
ガソリン車(従来) | エンジン → スプロケット → チェーン → 後輪 | 使用 |
電動バイク(低価格モデル) | モーター内蔵リアホイール → 直結駆動 | 不使用 |
電動バイク(中~高性能モデル) | モーター → ベルト or チェーン → 後輪 | 一部使用(だが減少傾向) |
■ チェーン非搭載のモデルが増加中
実際にベトナム国内で販売されているVinFastやPEGAの電動モデルの多くは、リアホイール内蔵モーター型を採用しており、チェーンそのものを使わない構造になっています。
理由は以下のとおり:
- 騒音ゼロを追求(チェーンは金属音が出る)
- メンテナンスフリー志向(オイル・張り調整が不要)
- コスト削減(ベルトや直結の方が製造工程が簡略化)
■ チェーンメーカーにとってのリスクと打ち手
この変化は、私たちチェーンメーカーにとって「静かに進む脅威」です。ガソリン車のような数の波は今後来ない、あるいは緩やかに減少する未来が見えてきました。
【考えうる打ち手】
- 電動バイクでも使用される「軽量・静音チェーン」の開発
- 産業用・農業用・特殊車両など、他分野への用途転換
- アフター市場の拡大(既存のガソリンバイク向け補修需要)
- 高精度・高耐久ギヤ・駆動系パーツへの展開
■ 「数」から「質」へ:生き残るための再定義
これまでの「数量勝負」から、「付加価値・耐久性・差別化」が鍵となる時代です。特にOEM向けだけでなく、ユーザーが選ぶアフターマーケット市場においては、信頼性やブランド力がモノを言います。
■ まとめ:終わりではない、転換点だ
電動化=チェーンの終焉、ではありません。ただし、「従来通り」では厳しくなるのも事実。
私たちチェーンメーカーに求められるのは、“チェーンの再定義”です。
ベトナムは今なお重要な市場ですが、その中で“どう生き残るか”を問われるフェーズに突入しました。